2012年10月~2013年3月/南仏記
【2012年10月~】
9月のフランス・スペインへの学生引率が怒濤のように終わりました。毎日下痢だったし、バスによる強行軍スケジュールだったし、
キズも痛んだけれども、まぁ私のカラダに関しては大変なトラブルもなく帰国できました。
大学では秋学期が始まりました。
体調は全体的に、ヨーロッパにいる間が比較的調子が良くて、帰国した後の方が具合が悪かったかも知れません。切って縫ったキズの痛み
自体よりも、お腹の中の、胃から腸にかけての消化器全体の具合の悪さの方が、最近はシンドイです。
時々胃のあたりが、何か胃けいれんみたいに「ギュー」っときます。
ひどいときは明け方寝ているときからそれが始まり、一日中断続的に続くこともあります。
また下腹部、つまり胃の下あたりから大腸がひどく重たいことがしばしばです。よく「胃の膨満感」などと言いますが、
あれが下腹部全体に重苦しくのしかかるっていう感じです。
やめれば良いのに、調子に乗って町田小田急デパートの上の天ぷらやで「天丼とビール」という食事をした時は、
途中からなんとも具合が悪くなってしまい、自宅までの10分程度の道のりを歩くことができないくらい苦しくなったりしました。
もう天丼はトラウマになって、しばらく食べられません。
【2012年12月~】
今年も建学祭が終わり、卒業論文の季節が来ました。
今年度の4年生のゼミは、人数がそんなに多くないので、卒論指導も比較的順調にこなせました。
体調は可もなく不可もなく、といった感じ。毎日の下痢は相変わらずです。たまに下痢しない日がポツポツとあるかな~、というところです。
卒論が終わり、クリスマスも迎えようという頃に、長野の別所温泉に行きました。今年の夏に一度行ったのですが、とてもいいところで、
今度は冬に来たいと思っていました。温泉につかるとお腹のキズもとても癒される感じがします。
【2013年1月~】
1月は卒業論文の口頭試問があります。今年は主査の担当が少ないめだったので、かわりに副査担当分が多かったです。
2月になると、卒業生の結婚披露宴(静岡にて。下の写真)に出たり、フランス留学生の同窓会に行ったり、
大学院関係の仕事をこなしたりと、いろんなことが駆け足で過ぎていきました。
←画像小さくてスミマセン
花嫁は2009年3月の卒業生。学科の友だち大集合。余興でやったのは、ももいろクローバーですね(笑)。
【2013年3月】
今年の3月も、いつものように南仏ロマネスク調査旅行に出かけました。
去年の3月に行った時は、大手術の直前だったので、今後しばらくはもうあんまり来れないかな~、なんて思ったりしましたが、
南仏は私の人生では生きる喜びのひとつなので、生きているうちはなるべく行きたいと思って決めました。
一番厄介であったのは、やはり毎日来る「下痢」の対処です。
下痢はたいていは朝食後に来ますが、時々時間がずれてそれ以外の時間にも来たりします。フランスはトイレ事情があまりよろしくありません。
都市部などでは、とにかくカフェとか探して入ればなんとかなります。
でも、南仏のロマネスク巡りで田舎や山地をレンタカーで走っている時とかに下痢が襲ってきたらと思うとヒヤヒヤです。
まぁ、山間部なんかは、言わば周囲が全て自然のトイレみたいなものなので(笑)、いざとなれば山の中や森の中で……。
でもさすがにそれはやはりちょっと勘弁して欲しいなと自分でも思いました。
しかし、幸いにして今回は「そういう事態」になることはありませんでした(ヨカッタ、ヨカッタ)。
今回は、阿部君という大学院生と一緒です。私は術後のこともあり、彼には荷物の運搬とかその他いろいろとサポートしてもらいました。
渡仏して、まず最初にブルゴーニュに寄って、ディジョンとボーヌを訪ね、ブルゴーニュ大学に留学中のヨーロッパ文明学科の学生や、
ボーヌ在住の卒業生などと会いました(写真下)。
その後、南仏ではヴァランス(Valence)まで下りてレンタカーを借り、もっぱらアルデッシュ県(Ardeche)を回りました。
アルデッシュは高地が続く土地で、標高が1500メートル近い峠道を越えたりすることもあり、
しかも今年は比較的気温が低く、ところどころでヒョウや雪が降ったりしました。
全体的に寒かったです。同じ時期のプロヴァンスやラングドックとはやはり違います。
次の写真は、アルバ・ラ・ロメーヌ(Alba-la-Romaine)にて。
シロウトの完全(?)防寒です。まるで映画に出てくる銀行強盗みたいですね(笑)。
顔をほとんど隠して、ズボンの下にズボン下を2枚も重ね、コートの下にはセーターを3枚重ねてます。
それでも寒い時はホントに寒い。
雪は事前に心配したほどではなく、スムーズに回れたほうだと思いますが、
しかしアルデッシュ中部西地域のマザン修道院を訪れたときは零下6度で雪が散らついて寒かったです(写真左下。まったく無人状態で自由に入れました)。
また南部のティネの近くの峠道(写真右下)では、小雨がいきなり雪となり、路面が見るまにどんどん白くなりました。
視界も10メートルを切るくらいになり、さすがにこれはヤバイと思い、急いで「下界」に戻りました。
零下6度のマザン修道院(Abbeye de Mazan) | ティネ(Thines)の峠道。小雨がいきなり雪となる。 | 雪の舞い散るアルデッシュ(ビュルゼ/Burzet) |
今回はアルデッシュ県の北部~中部のロマネスクを数多く訪れましたが、その中からいくつか。
まずなんと言っても、クリュアス(クリュア Cruas)。大きな修道院教会(サント・マリー教会、L'Eglise abbatiale Saint-Marie
de Cruas)があります。
ローヌ川をはさんですぐ南にはモンテリマールがあります。この地にベネディクト派の修道院が創建されたのは、紀元804年のこと。
宗教戦争時に修道院の建物やクロワトル(回廊)は破壊されてしまいましたが、11世紀中頃~12世紀のロマネスク期の付属教会は残っています。
ロンバルディア帯で装飾された南フランス初期ロマネスク部分や、身廊西側のトリビューンの柱頭彫刻、非常に古いクリプトの彫刻類などが見ものです。
実は昨年も来たのですが、見学できる曜日と時間が決まっていて、その時は中に入れませんでした。
今回は満を持して訪問。観光案内所のガイド付きで見学しました。
クリュアス(クリュア)の修道院教会・後陣 | トリビューン(12世紀)の柱頭彫刻。植物文様とライオン。 |
内陣の下にある地下クリプト。11世紀。 | クリプトの柱頭彫刻。円を描く植物文様。 | |
地下クリプトの柱頭彫刻・ニワトリ | オオカミ | 祈る人(オラント) |
次は、クリュアスの少し北、ロンポン(Rompon)の山の上にある、サン・ピエール修道院の遺構(Couvent des Chevres)です。
ロンポンの北のヴュー・ロンポン地区の丘の上にも小さなロマネスクがありますが、そこからさらに細いダート道をガタガタと走り、
ローヌ川を見下ろす高台に出ると、その遺構があります。
この場所は古代にはヴァランスとアルバを結ぶルート上に位置し、中世に入ると要塞が築かれました。
その後クリュニー派の修道院が建てられ、12世紀半ばに最盛期を迎えます。
ヴィヴィエ(Viviers)司教区でも最も重要な修道院でしたが、百年戦争の時代には破壊されていた模様です。
現在は修道院教会の身廊の側壁や後陣の壁の一部が残っています。
ローヌ渓谷を吹いてゆく風に当たりながら、今から何百年も前に、この地でこの景色を見ながら、
修道士たちは、どんな生活をし、どんな祈りをあげていたのでしょうか。
ロンポンのサン・ピエール修道院遺構。 | 後陣からはローヌ川とドローム・アルデッシュの平原が見渡せる。 |
オブナス(オブナ Aubenas)にも少し滞在し、その周辺のロマネスクを巡りました。
印象に残っているのはオブナスのすぐ北の山間の村にある、
サン・ジュリアン・デュ・セール(Saint-Julien-du-Serre)の教会です。
12世紀のロマネスク様式の後陣に、大きながっしりとしたアルク・ブータン(フライング・バットレス)がついていて、糸杉のある南仏風の風景が美しい。
後陣の外壁および教会内部の柱頭の彫刻が、ユニークでおもしろい。
ここの教会は、少し離れたところにある村役場で入口のカギを借りれば、中を自由に見て回れます。今回われわれもそうしました。
内部は明るくて、やはりいろいろな柱頭彫刻があります。真っ逆さまになって落下する人の彫刻とかもありました。
サン・ジュリアン・デュ・セール教会
サン・ジュリアン・デュ・セール教会の後陣外部につけられている柱頭彫刻や壁面に埋め込まれた彫刻 |
役場でカギを借りて中へ | 教会内部・逆さまに落下する人 | お尻にかみつくドラゴン |
ヴィネザック(Vinezac)は、オヴナスの南約10キロの閑村。もともとは8世紀には教会があったというが、現在のものは12世紀のロマネスク期のもの。
後陣が半円形ではなく五角形で、高さが10メートルと高い。トランセプトはもっと新しい。交差部の上には美しく彩色されたクーポールがのっています。
ここでもやはり身廊や内陣の彫刻類がユニークで楽しい教会です。
天使をはじめ、いろいろなモチーフがありますが、中でも一番ほほえましかったのは、身廊脇にある「ライオンの穴に入れられたダニエル」(写真右)でした。
ヴィネザックの教会 | ダニエルとライオン | エクス在住の卒業生と |
最後は、いつものようにエクス・アン・プロヴァンスへ。この街に在住の卒業生と会って夕食会を開き、旧交を暖めました(写真上右)。
エクスのあとはパリに入り、帰国しました。
パリでは「奇跡のメダイユ教会」(Notre-Dame de la Medaille Miraculeuse)を訪れました。
実はここは初めてだったのですが、日本でもネットで紹介されたり、観光客が多かったりで、おみやげにここの奇跡のメダル(メダイユ)を買って帰るのが定番のようです。
私もご多分に漏れず、いくつか買いました。術後のお腹に御利益があるでしょうか?